人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ポルシェ広報誌クリストフォーラス1995年3月号 993RSクラブスポーツの記事

前回の記事に引き続き、993RSストリートの1つ前の1995年3月に発行されたポルシェAGの広報誌クリストフォーラス(Christophorus) 通巻253号に993RSクラブスポーツに関する記事が掲載されています。


記事タイトル
コンチェルト・フリオーソ(激情のコンチェルト)
300馬力、1,270kgの生粋スポーツカー

ポルシェのニュー・カーは911ターボだけではない。
プログラムにはRSが再び登場するのである。RSはポルシェではレン・シュポルト(レーシング・スポーツ)を意味する言葉であり、同時に、当然のことながら軽量構造をも意味している。このニューRSはアムステルダムのモーターショーで、初めて大衆の前に披露された。ベーシック・タイプは5月、さらに軽量のクラブスポーツ・タイプも間もなく、レースシーズン開幕に合わせて販売が開始される。
このニュー・カレラRSの抜群のハンドリングについては、熱心なスポーツ・ドライバーたちの間では当然予想されていた。その理由のひとつに、ベースとなったニュー911の存在がある。あらゆる点で絶賛されたニュー・カレラは、中でもハンドリング性能と快適性の飛躍的向上が目覚ましい。もうひとつの理由は、世界中のレーストラックで華々しく活躍し、スポーツ・ドライブ・ファンの心を捉えた前代カレラRSの鮮明な記憶である。この車は総数で2,300台生産されている。

この二つの要素のコンビネーションは、RSファンの鋭い読みをはるかに超えてしまった。RSプロジェクト・ディレクターでエンジニアのヴォルフガング・シュミーラーが、左目でウインクしてこう語る。「このRSは当然前代モデルより速く、しかもより快適でなければならなかった」。これらのまったく相容れない二つの要求を、1台の車で満たすのは容易なことではなかった。「車体を軽くするために、わずか50gのことでよく争ったものだよ」。まさしくその間の事情が察せられる。

伝説的な1973年型カレラRSの後継車を”もう少し快適に”しようという決定には、レースに参加しない一般ユーザーにも、RSのダイナミックな走りを体験して欲しいとの意味が込められていた。それでもシュミーラーが言うように、我々は前代モデルの性能を凌ぐ「現代のスーパーカップ・カレラに極めて近い」車を扱っているのだ。ホッケンハイムのショートサーキットでのラップ・タイムは、ヴァルター・ロールの腕ならばこれまでの記録を2秒は上回るだろう。

ポルシェは”ポピュラー・スポーツ促進への贈り物”として約1,000台のカレラRSを製作し、環境融和性、日常使用性、レース並みのドライビング・ダイナミクスが見事に共存できるということを、強くアピールする。カレラRSの1995年モデルは、まったく新しいページを開くのだ。これはRS計画全体のバックボーンをなす哲学を反映するだけではない。いわばダイナミックな先鋒とも言うべきこの最もスポーティなロードモデルは、幅広いポルシェの開発能力を示す非常に画期的なディテールを備えている。カレラRSの空冷ボクサー・エンジンには、いわゆる”ヴァリオラム”システムが初めて備わった。鋳造マグネシウム製の6個シリンダーをまたぐ形で装備されており、見た目にも極めて印象的だ。ヴァリオラムとは調節可能なインテーク・マニフォールドで、複雑な弁機構を持つ非常に複合的な設計になっている。弁の作動により、低速回転時(5,000RPMまで)は吸気管が長く、高速回転時には短くなる。このシステムではシリンダーの充填効率を上げるため、共振チャージの効果を利用している。中速回転域でのトルクが15%アップしたことも、RSスタイルのパフォーマンス・ゲームのほんの一例に過ぎない。3.8リッターに増量された排気量から6気筒エンジンが引き出すパワーは、極めて強力である。5400RPMで355Nmのトルクをクランク・シャフトに送り込む。シリンダー・ボアを2mm拡大して102mmとしたのに加え、燃料の流れを効率よくコントロールするため、さらに大きくなったバルブ(吸気43mm、排気51.5mm)を備えた、シャープなプロファイルを持つカムシャフトが装備されている。特に感嘆すべき興味深い事実は、この車がシャープなスポーツ・タイプであるにもかかわらず、バルブ・クリアランスの数値が、調整不必要な油圧式タペットによって維持させていることである。

このボクサー・エンジンは中速域(6500RPM)で楽々と300HPを発生し、6速ギアボックスを通じて、265mmという幅広の駆動輪に伝える。これを体験するのは何とも魅力的である。一端スタートすると、この3.8リッターエンジンは直ちに安定した静かなアイドリングに入る。スロットルを踏み込むや、その反応はどの回転域でも敏感かつ迅速で、まさにレーシング・エンジンのサラブレッドそのものだ。パワーの発生は全体を通して極めて安定している。力強いトルクの上昇を身をもって感じれば、このスポーツ・マシーンの素晴らしいエンジン性能と、類を見ないほどに洗練されたパフォーマンス性に感嘆することだろう。

最初の3段階のギア比はレース・サーキット用に、つまり幾分高めに調整されている。排気音は極力抑制されている。これはちょっとした買い物にも使用できるRSなのだ。

サウンドはどうか?
これを聞いたらやめられなくなるに違いない。低回転域での静かな底力のあるエンジン音が、5000RPMを越えたとたんにレーシングかー並の咆哮に変わる。だがこれは車外の者にはさほど感じられない。RSは当然のことながら現行の騒音規定を満たしており、それだけでなく1995年以降施行される排気規制にも合致しているのだ。これは主に重量のかかるパーツや防音材、装飾品などを取り除いたインテリアが、アンプの働きをするのが原因だ。さらに多くの装備を取り払ったクラブスポーツ・ヴァージョンでは、この傾向が顕著に出る。乗っている者は、体がぴったりと納まるレカロの超軽量レース・スポーツ・シートにベルトで固定されて、一度聞いたら忘れられない”激情のコンチェルト”を聞くことになる。さらに改良を加える途中の段階で、このカレラRSにはサーボ・ステアリングが加わった。それなりに重量は増した(約9kg)ものの、その働きはレース・スタイルのドライビング時と同様、市内走行時も大きな威力を発揮する。レースカーでは当たり前のステアリング・ホイールからのショックは、サーボ・ステアリングの敏感な反応によって和らげられている。

RSクラブスポーツ・ヴァージョンは本誌が最初の試乗を行った。パフォーマンス・ウエイト(1HPにつき4.2kg)向上のため、ぜいたく装備を徹底的に犠牲にしているものの、ドライバーに我慢を強いるつもりはないし、プロ・スポーツ並みの仕様でドライバーを泣かせるつもりもない。ロールゲージの対角バーを避けながらレーシング・シートに納まるのが少々面倒な点を除けば、RSの車内は完璧であると同時に、これまで見慣れたものとあまり変わっていないことがわかるだろう。スリースポークのニュー・ステアリング・ホイールを前にしたシートのポジションは理想的だ。シフトの動きは、新たに導入した運動工学の効果で、一般生産型カレラよりも素早く、かつ正確になった。またRSはスタンダード・クラッチの軽い動きを、そのまま引き継いでいる。

これらが相まって、路上のパフォーマンスは魅力的だ。カレラの中でも最もスポーティなこの車を、ハンドリングの容易さ、各操作機器の便利な配置などを楽しみながら、都会の渋滞でもリラックスしてドライブすることができる。走れば走るほどRSの魅力にますます引き込まれてしまうだろう。

その走りは荒々しいものではない。ホイールから伝わる衝撃は、スプリングが実にスムーズに、それでいてしっかりと吸収してくれる。これはドライビングを真に楽しくする、新しい魅力的な要素といえる。極端な堅さは影をひそめた。従って、レーシング・トラックでのラップと同様、そこに向かう途中の走行も楽しめるというわけだ。

車重わずか1270kgのクラブスポーツのドライバーは、スーパーカップ・カレラのドライバーと同様のダイナミズムを体験できる。その感覚の領域は、感動の域を越えて恐怖感にまで及ぶに違いない。少なくともこれまでドライビング・ダイナミクスの限界を極めたことのないドライバーたちにとっては。

クラブスポーツRSの見事なまでの敏捷さ、直接的な路面接地能力は、ユニバルのシャシーと溶接で組み込まれたロールケージに負うところが大きく、現在までのところ最も優秀なレースカーのみが提供し得るものである。

その結果、ドライバーは極限状況で必要とされる情報を、ダイレクトに入手できる。それをRSは広い範囲にわたって、そのリミットに至るまで難なくやりとげてしまうのだ。

これこそがレースだ!

この3.8リッター・エンジンの強力な加速性能にマッチするのが、疾駆するポルシェを制御してきた素晴らしいブレーキ・システムである。レース仕様のニュー911ターボに搭載された巨大な4ピストン・システムと4チャンネルABSの性能は、これまでブレーキ・テクノロジーとして知られてきたもののすべてを再び凌駕した。その威力は妥協を許さない。追い抜かれることを意図してブレーキをかけた時以外、カレラRSクラブスポーツを簡単に追い抜くことは、誰にもできないであろう。



ポルシェ広報誌クリストフォーラス1995年3月号 993RSクラブスポーツの記事_b0075486_23021756.jpg
ポルシェ広報誌クリストフォーラス1995年3月号 993RSクラブスポーツの記事_b0075486_23023993.jpg
ポルシェ広報誌クリストフォーラス1995年3月号 993RSクラブスポーツの記事_b0075486_23024921.jpg
ポルシェ広報誌クリストフォーラス1995年3月号 993RSクラブスポーツの記事_b0075486_23030665.jpg

by p96993rs | 2020-12-03 20:34 | 993RS | Trackback | Comments(0)


993RS購入17年目に突入、その間7回の引越し+更に2台目の944・・・サラリーマン維持していけるのか


by p96993rs

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

以前の記事

2023年 12月
2023年 09月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 08月
more...

フォロー中のブログ

miyucolle
www.99663.com
ドカポルGS
kata-no-tikara
徒然M8写真集。
戦闘的に走れ!
飽商909の"ナローな"...
魅惑のおしり・・・
PSCJ -PORSCH...
CADIC社長の絵日記
RIDE THE POR...
 poco a poco
親子ボクスター
All things t...
Porsche 996 ...
楽勝だよ! 930ターボ...
☆ミカナ と チワワ と...
MASAの…
極彩色の大決戦!!
神戸Cayman物語
やっぱりポルシェは止まらない!
RESULT blog
1% のポルシェ カイエンMT
Flat & Straight
I belong to 911
Driving Side...
オシリ大好き~
weekly repor...
blue moment +
shuu
ミディアム・レアでお願い...
with iPhone

最新のコメント

コメントありがとうござい..
by p96993rs at 22:48
鍵コメ様 ビックリなコ..
by p96993rs at 20:11
どうもです。 以前の9..
by p96993rs at 10:13
お世話になってます。 ..
by silverwing95 at 16:17
どうもです。 帯広は食..
by p96993rs at 23:27
こんにちは。 道北満喫で..
by silverwing95 at 11:25
どうもです。 車検証上..
by p96993rs at 00:14
こんばんは。 教えてく..
by silverwing95 at 19:20
P993rs様 早..
by ヒロ at 11:30
ヒロ様 コメントありが..
by p96993rs at 00:34

カテゴリ

全体
モディファイ・パーツ
トラブル
メンテナンス
データ覚書
クルマ周り
過去のクルマたち
ドライブ、ツーリング
その他もろもろ
休みの過ごし方
993RS
グッズ
クレーマーK4

マイリンク

検索

タグ

(4)
(2)
(2)
(1)
(1)
(1)
(1)

ライフログ


彼女のカレラ 5 (5) [PR]


陽のあたる坂道 [PR]


雑居時代 DVD-BOX1 [PR]


ラストコンサート [PR]


ノーマンズ・ランド [PR]


NHK少年ドラマ・アンソロジー1 [PR]


彼女のカレラ 12 (プレイボーイコミックス) [PR]


彼女のカレラ 13 (プレイボーイコミックス) [PR]


彼女のカレラ 14 (プレイボーイコミックス) [PR]

最新のトラックバック

その他のジャンル

ブログパーツ

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

車・バイク
サラリーマン

画像一覧